自然農法で栽培された野菜を手にしたことがある方なら、この野菜が極めて腐りにくく、保存性に富むことを実感したことがあると思います。
野菜が腐る原因のひとつとして、活性酸素が生体内を攻撃し、老化や腐敗の進行が早まることが挙げられます。
そこで、自然農法の野菜が腐りにくいのは、活性酸素を除去する能力が慣行農法の野菜より高いからではないかと考え、両野菜の抗酸化作用と酸化を防ぐ主成分のひとつであるポリフェノール含量を評価してみました。
なお、この試験は予備実験で、サンプル数、気象、土壌および品種などの栽培環境設定が不十分であり、科学的に立証されていないため、得られたデータはあくまで目安として読み取ってください。
図1と表1に、スーパーなどで販売されている慣行農法のダイコンと、自然農法(ひでさん、FF農法)で栽培されたダイコンの抗酸化作用(DPPHラジカル消去法)およびポリフェノール含量(フォリン・デニス法)を示しました。
ダイコンはビタミンCなどのラジカル消去能が高い成分が多く、抗酸化活性が高いことが知られていますが、自然農法のダイコンはIC50でみると、慣行農法の約2.4倍の抗酸化能を持っていました。
図2、表2は同じくニンジンの抗酸化活性を比較したものですが、こちらはラジカル消去能こそダイコンより低いものの、農法による違いは極めて顕著でした。
すなわち、IC50についてみると、自然農法は慣行農法の実に6.6倍の抗酸化活性を持っており、この差は驚異的であるといえます。以上のことから、自然農法の野菜の高い抗酸化能が、保存性を高めている要因のひとつとして示されました。
では、なぜこのような差が生じるのでしょうか。本来、植物は過保護な管理を受けずとも、腐敗や老化に対抗する術を持っていると著者は考えます。
農薬や肥料の投入は、植物体内の活性酸素を増加させる上に、抗酸化力を持つことを妨げると思われます。
その根拠として、著者の予備実験において、自然農法野菜のビタミンCなどの含量が、抗酸化能に比例して高い傾向が認められています。
また、植物体内の硝酸含量(窒素)が増加すると、ビタミンC含量が低下することが報告されています。
このような抗酸化作用の高い野菜を食することは、人間の体内で発生する活性酸素の除去にも大いに貢献します。
今回取り上げた抗酸化作用は、自然農法の野菜が持つ偉大な力のほんの一部分に過ぎず、優雅で洗練された植物の振る舞いを、今後も観察し続けたいと思います。